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黒猫は魔女の使いという迷信や、黒猫は縁起が良いとか悪いとか
どれが本当かわからない話が、猫の中でも黒猫には多くあります。
ほとんどは人間の都合による勝手なこじつけのようですが、
黒猫が標的にされた理由と経緯を歴史から見ていきます。
迷信によって悲惨な運命に翻弄された黒猫、
でも最近その魅力が見直されてきていますので、
最後にそれを確認しておきましょう。
黒猫が魔女の使いというのは中世ヨーロッパの迷信
黒猫と魔女という組み合わせは映画・アニメ・ゲーム等で定番ですね。
黒い色同士で何やら怪しげで神秘的、興味をひかれます。
しかし、魔女という人物は本当に実在するのでしょうか?
魔女という言葉自体は世界史の中で出てきますが、
実在したわけではなさそうです。
最初にその点から調べてみましょう。
世界史に登場するのは「魔女狩り」と「魔女裁判」。
中世ヨーロッパにおける宗教上の大規模迫害事件。
13世紀に異端審問が強化されるにつれ、異端と魔女が結びつけられ、
魔女そのものが取り締まりの対象となっていった。
魔女と認定されたものは絞首刑や火あぶりの刑で処刑され、
15世紀から18世紀までで約4万人から6万人が犠牲になった。
なんとも恐ろしい時代があったのですね。
その中で失笑を買いそうなものがありました。
オランダにある魔女の秤です。
魔女は空を飛ぶので体重は極端に軽いと考えられていた。
そこで当人の体重を量って軽ければ魔女と判定されるという秤。
でも1500年代に作られてから最後に使用された1729年まで
この秤で魔女と認定された人物は一人もいなかったそうです。
人間の愚かさを象徴するような話ですね。
この暗黒の時代に魔女と一緒に犠牲になったのが黒猫。
魔女の使いとされた動物はカラスやヤギなどもいたそうですが、
黒い猫はいかにもそれらしく見えますから。
黒猫は暗闇に紛れることができ、
足音を立てずに歩き神出鬼没、
暗がりで異様に光る目、
魔女の使いにぴったりです。
身に覚えのないことで魔女とされ殺された人々は
あまりにも気の毒ですが、
何のかかわりもないのに魔女の使いとされ殺された多くの動物
とくに黒猫たちは可哀そうすぎます。
人間は本当に愚かで残酷です。
ところで、もうひとつ余談ですが、
この魔女狩りの結果としてペストの大流行が起きたという説は、
史実とは合わないようです。
魔女狩りで大量の猫がいなくなったためネズミが急増、
その結果ペストが大流行、という話ですが、
ペストはこれまでの歴史上3度にわたって世界的流行が起き、
第2次が魔女狩りの後とされていますが、
実際にはペスト大流行の後に魔女狩りが激しさを増したとか。
ペスト大流行による社会不安と人々の不満を解消させるため
スケープゴートにされたという説が妥当なようです。
まったく残酷な歴史で、
犠牲になった人々や動物たちの無念を思うと痛ましい限りです。
黒猫の縁起の良し悪しは地域によって異なる
黒猫は古代エジプトでは神聖な生き物でした。
猫の女神のバステト神は、病気や悪霊から守る守護神、
また豊穣や安産を司る神でした。
ところが後代、
中世ヨーロッパで魔女の使いという汚名を着せられ、
不吉な動物というイメージを持たれるようになりました。
ヨーロッパでは現在でも黒猫が横切ると不吉で、
黒猫をまたぐと不幸が訪れると言われる地域が多いようです。
イタリアでは近年まで、黒猫は不吉だからという理由で、
多数殺されていたそうです。
迷信とは恐ろしいものです。
しかし、それとは真逆の迷信もあります。
イギリスやイングランドでは、
黒猫は幸運のシンボルとされていますし、
フランスでは黒猫は魔法の猫なので大切にすると
飼い主に幸運をもたらすといわれ、
スコットランドでは玄関先に見知らぬ黒猫がいたら
繁栄がもたらされると言われるそうです。
いずれにしても人間が勝手に作り上げた迷信で、
当事者である黒猫には迷惑な話です。
では、日本ではどうでしょうか?
平安時代初期の宇多天皇の日記に、
黒猫を飼っているという記述があるそうで、
人々に愛されていたことがわかります。
夜目が効くという理由で黒猫は魔除けや幸運、商売繁盛の象徴
とされ、縁起の良い“福猫”として大切にされたそうです。
江戸時代には、黒猫を飼うと結核が治るという噂が広まり、
黒猫を飼うことがブームになったとか。
日本人の猫好きは昔からだったのですね。
ところで黒猫は、昔は福猫だったのに、
不吉なイメージが加わったのはいつからでしょうか?
開国以降に欧米から持ち込まれたようで、
今では黒猫は福猫という人もいれば不吉だという人もいて
評価は定まっていません。
しかし、縁起が良いとか悪いとか、
黒猫本人はあずかり知らぬことで、
人間が勝手にあれこれ言い合っているだけです。
黒猫は人なつこくて賢く魅力的な猫
黒猫は歴史上、魔女の使いとされて虐殺されたり、
縁起が悪い動物として迫害されたり、
かと思えば幸運を呼ぶ猫として大事にされたり、
人間の都合次第で運命が翻弄されてきました。
黒猫に対する偏見は現代でも残っているかもしれません。
ほかの猫たちと同様黒猫も正当に評価されれば
家族の一員に相応しい可愛さが認識されると思うのですが。
黒猫の魅力はどんなところかと言うと↓
・人への警戒心がうすく人馴れしやすい猫が多い。
・穏やかな性格なので飼いやすい。
・友好的でほかの猫たちと仲良くなりやすい。
・好奇心旺盛で甘えん坊が多い。
・頭が良くて飼い主の気持ちを察する賢さがある。
個体差はあるものの、
黒猫は飼い主にとって飼いやすい猫と言えます。
そしてつやのある黒い被毛と際立って輝く瞳。
太陽の光が当たると毛並みの色が微妙に変化するのも魅力的。
写真写りがいまいちとかインスタ映えしないとか言う人がいますが、
そこは技術と工夫で対処しましょう。
今回は黒猫に関する迷信を調べてみました。
魔女の使いだということも、縁起の良し悪しも、
すべて人間の都合によるこじつけです。
人間に利用され翻弄されてきた黒猫ですが、
見過ごされてきた魅力が最近見直されています。
改めて黒猫に目を向けてみるのはいかがですか?