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猫は自由気ままでマイペースなのが当たり前、
決して人間の思うようには動いてくれない。
したがって他の動物のように調教することは不可能。
それが猫だと多くの人が思っています。
しかし、
じつは気ままな猫もある程度調教できるのです。
TVや映画、サーカスにまで出演しているのですから。
ではどのように調教できるのか、
簡単なものから最高難度まで3つの段階に分けてご紹介します。
そして、最高難度のサーカスに関するある論評を参考に
それらは猫にとってどんな意味を持つのか
ご一緒に考えていただければと思います。
気ままな猫を調教する3つの段階
気ままな猫の調教は大まかに次の3つの段階に分けられるでしょう。
↓
◆第1段階;しつけという調教は多くの飼い猫にできる。
犬なら簡単にできる“お手”や“おすわり”
犬より少し時間はかかりますが、
分別のついた大人猫ならこれくらいはしつけられます。
ご飯の前の“待て!”
“お手”の“おかわり”
くるりと回る“お回り”
ごろりと体を回転する“ゴロン”
これらも、時間はかかりますが
しつけとして教え込むことはできます。
猫それぞれの気性にもよりますが、
辛抱強く教えればできるようになるものです。
もちろん飼い主との信頼関係があってのうえ。
私が昔飼っていた猫は
ほめられるのが嬉しくてやっていたようです。
今は猫の数が多すぎて
そんなことをしている時間はありません。
それに、やはり猫はのんびりと
自由気ままにしている方が猫らしく見えますよね。
◆第2段階;人に見せる演技をさせる調教
TVや映画に出演するタレント猫っていますね。
いい演技を見せる猫は人間の俳優養成所みたいな所で
演技の訓練をうけているそうです。
この調教は難易度が高そうです。
気ままな猫に自然な感じで演技させるのはかなり難しいでしょう。
その点、今までに見たTVや映画の中で、
猫が割合自然な演技を見せていた作品は
1996年のロシア映画『こねこ』
↓
舞台は真冬のモスクワ、
主役はアパートの窓からトラックの屋根に転落して
遠くへ運ばれてしまった子猫。
他の猫たちに助けられながら生き延び、
元の飼い主の元へ戻ってくるというストーリー。
世界一の猫使いと言われる人に調教された芸達者な猫たち、
その演技力には驚かされます。
準主役(?)の男性を信頼しきっている猫たちの姿が秀逸。
無理矢理強制したのでは得られない猫たちの演技から推察すると、
監督と俳優も猫を愛している人なのだと思います。
でもハードルが高そうですね。
日本の映画やTVではこれほどの演技は見たことがありません。
いくつか見た中での猫たちは自然な感じには見えませんでした。
猫を飼っている人なら
猫にも感情がありそれが表情に現れるということをご存じでしょう。
TVや映画に出ている猫たちの表情はどうでしょうか?
本心からの演技でないことは明らか、
不本意な状況に困惑しているように見えます。
もちろん人間のような演技を期待するのは間違いでしょう。
我慢してそこにいるだけでも立派です!
◆第3段階;サーカスではまさに調教!
これぞ調教!と言えるのはやはりサーカス芸でしょう。
よく知られているのは
ロシアのサーカスに猫も出演していること。
虎やチンパンジーなど他の動物たちと同じように
いろんな芸を披露して見せます。
気ままな猫をここまで調教するのは相当苦労したと思いますが、
猫の身になって考えるとちょっと疑問が生じます。
サーカスの動物たちがどのように
芸を仕込まれるかご存知ですよね?
うまくできたら食べ物をあげる、
言うとおりにしないと鞭で打つ、
そんな様子を見ているだけでも
動物がかわいそうに思えてきます。
気ままな猫もそのような調教を受けて、
やむなく仕込まれた通りに芸をするわけですね。
想像するだけで哀れになります。
サーカスは人を楽しませるために動物虐待?
じつはサーカスが動物虐待だと訴える人もいるのです。
アメリカの動物権利団体PETAが、
サーカスにおける動物虐待を訴えるリーフレットを出しています。
以下はその抜粋です。
↓
▲テントの裏では、動物たちがむち打たれている。
動物たちは、したくて芸をしているのではない。
そうしなければ痛い目にあうという恐怖感から芸をしているのだ。
調教師たちは、調教棒(鋭い鉤のついた棒)、
いろんなタイプのムチや杖、スタンガンなどを携えている。
うまく芸をしたときしか餌をもらえない。
サーカスの動物たちは換気の悪いトレイラーなどで、
どんな悪天候であっても年に50週間も移動させられる。
気温が摂氏49度までに上昇したトレーラーの中で、
アフリカゾウが死んでいるのが発見された。
常に鎖につながれており、運動もできないうえ、
排泄物にまみれた硬い床の上に立ち続け、
肉体的に不自然な、ありえない芸をさせられる。
これらすべてによって動物たちは心身の障害を抱えてしまう。
▲動物たちの逆襲を受けて、子供たちが危険な目にあう。
怯える子供達を背中に乗せたまま暴れまわる象が
サーカスの観客たちをパニックにおとしいれ、
調教師を踏み殺したあげくの果てに射殺されるという事件が起きた。
首輪で繋がれた2匹のチンパンジーが、サーカスの最中に暴れだし、
ひとりの子供を観客席からから引きずり出して噛みついた。
こういった事件はしばしば起きています。
▲動物の中には、人間に伝染する病気を持っているものがいる。
アメリカでは近年、飼われている象たちが人間の結核に感染して
死亡していた。
人間への逆感染の危険があるにもかかわらず、
感染した象たちは巡業している。
いくつかのサーカスは、ふれあい動物園も一緒に巡業しているが、
この動物たちが大腸菌やサルモネラ菌のような細菌を子供たちに
感染させる、と医学の専門家は警告している。
▲共感能力つまり他者の身になって考える能力を身に着けることが
子供にとって不可欠であると大多数の心理学者は考えている。
動物たちが屈辱的な芸当をするよう強制される見世物は、
それとは正反対のことを子供たちに教える。
さらにサーカスは野生動物のゆがめられた姿を見せることにより、
子供たちが学校教育で学ぶことを台無しにしかねない。
以上のような理由から
子供にサーカスを見せないことにする親もいるそうです。
こういったことを知ると、
たしかにサーカスとはどれほど有益なものなのか
疑問を感じてしまいます。
気ままな猫だけでなく多くの動物たちが
ありえない曲芸を見せてお客を楽しませたとしても、
それに至るまでの動物の苦しみを考えてしまいますし、
素直な気持ちで楽しむことはできなくなります。
動物たちの犠牲の上に成り立つサーカスは、
見る人たちに何を教えるでしょうか?
このような理由からか、
最近は動物を使わないサーカスの数が増えているようです。
たとえばシルク・ドゥ・ソレイユとか。
これからのサーカスは
動物たちの曲芸を見せるだけではなく、
素晴らしいアクロバット、愉快なピエロ、
卓越したジャグラーなど、
家族みんなが安心して楽しむことができるものになるでしょう。
以上のようなわけで、
気ままな猫も調教できないわけではないのですが、
自宅でできるお遊び程度の調教にしておくことが
猫と飼い主双方の幸せにつながるかと思います。