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最近猫を散歩させたいという人と出会うことがあります。
ずっと家の中ばかりでストレスじゃないか?とか、
運動不足になるのでは?とか言います。
YouTubeで猫を散歩させている動画を見たりして
自宅の猫も散歩させてみようかと思うようです。
では猫に散歩って必要でしょうか?
ズバリ結論を言えば、猫に散歩は不要です。
なぜそう言えるのか、
今回は猫の習性に照らして散歩の是非を考えます。
猫の習性や気持ちへの理解不足から失敗した人たちの
残念な実例も参考にご紹介します。
猫の習性を理解してほしい
散歩といえば犬の散歩を連想します。
リードを持つ飼い主と一緒に嬉しそうに歩いている姿。
猫を散歩させたいという人はそれと同じ経験をしたいと
思っているのかもしれません。
ハーネスとリードを付けていれば安全では?という人もいますが、
猫と犬の習性の違いを理解していないのではと思ってしまいます。
どちらも警戒心が強く縄張りを守りたいとか、
好奇心旺盛で動くものを追いたくなるなど、
似通った習性もあるのですが、
明らかに正反対の習性を考えてみてください。
★身体と行動の特性
身体の造りからすると犬は持久力が高く、
長距離を走ることができます。
公園やドッグランなど広い場所へ行くと、
大喜びで走り回っていますよね。
運動が大好きで、健康上毎日の散歩は必要不可欠。
一方猫は、瞬発力とジャンプ力は格別ですが、
持久力はありません。
瞬間的に身をかわしたり逃げ出したりしても、
ずっと走り続けることはできないため、
身を隠せない広い場所は嫌いで
潜り込んで隠れられる狭い空間が好きです。
知らない場所で身をさらしたくないので
行動範囲は意外と狭いのです。
次のような対照的な行動も違いを物語っています。
犬は、群れで行動するという社会性があり、
群れのリーダーに服従するのは当然。
しかし猫は、独立心が強く単独行動を好みます。
無理強いされたり拘束されたりするのは大嫌い。
以上のような特性から人との関係性も異なってきます。
★人との関係性
犬は飼い主のことをリーダーとして認識し、
その指示や命令に従順に従います。
一方猫は、飼い主と自分は対等であるという認識。
飼い主を身体の大きな猫だと思っているみたいです。
飼い主に甘えたり遊んだりするのも自分中心、
いつも自由気ままに行動したいのです。
猫のマイペースは生半可ではありません。
猫を犬のように飼い主に従わせようとしても
無理なことは明らか。
ですので猫が犬のように
飼い主の思い通りの散歩をするとは考えられません。
実際YouTube動画などで散歩させられている飼い猫の様子は
喜んでいるようには見えません。
※ 元々外暮らしの野良猫に関しては、
今回は別問題ですので考慮対象から除外しています。
理解不足で失敗した例が多いことを知ってほしい
上述のように猫と犬は正反対の習性。
猫には散歩を楽しむという感覚はありません。
むしろ
猫にとって広い場所は危険が多いので恐いのです。
どんな危険があるでしょうか?
↓
猫には自分の縄張りの地図が頭の中にあります。
飼い猫の縄張りは自分の家とその周りですが・・
見たことのない場所ではそれがないので、
困惑してしまいます。
しかも周りには怪獣のよう(?)に大きな人間がたくさんいて、
見たことのない犬、会ったことのない猫・・・
超臆病な猫ならそれだけでパニックになってしまうでしょう。
そして多くの車、列車や飛行機の音、
耳が良すぎる猫にとってすべてが大音響で恐怖!
交通ルールなんて知らないので、
車にひかれないように避けることは無理。
実際外歩きの野良猫でさえ交通事故で多数死んでいます。
そのうえ、つけ慣れないハーネスとリード。
束縛されることが嫌いな猫にハーネスなんて、
自由を奪う拘束と同じです。
イザというとき逃げられないのは恐怖でしかありません。
ハーネスとリードを使えば安全に散歩できる、
飼い主が一緒なら大丈夫、という考えは甘いです。
猫は軟体動物のようにハーネスをすり抜けて、
全力疾走で身を隠せる場所へ逃げるでしょう。
飼い主が呼んでもパニック状態の中では聞こえません。
猫は家にいるときと外とではまるで違う反応を見せます。
外では飼い主もその他大勢の人と同じ。
遠くの方から飼い主が自分の猫を見分けても、
猫の方は飼い主を見分けられません。
捕まえようとして走って近づいたら逃げていきます。
追いかけられたら反射的に逃げるのは当然。
聞き覚えのある声で名前を呼ばれても周囲の音にかき消され、
恐怖心の方が勝ってしまうのです。
ですので、ハーネスがあれば安全というわけではありませんし、
飼い主が一緒なら大丈夫というわけでもないのです。
猫を散歩させようとして失敗した飼い主は
深く考えずに行動してしまったのでしょう。
次のような失敗例が報告されています。
↓
◆猫を車に乗せて買い物に出かけ、
駐車場で少し開けた窓から急に飛び出し逃げてしまった。
◆猫を抱っこして散歩中、
犬を見た途端ピョーンと腕から飛び跳ねて逃げた。
◆首輪とリードを付けて散歩していたら、
電車の音に驚いて駆け出し、首輪がすっぽ抜けて逃げた。
◆首輪とリードを付けて外につないでおいたところ、
野良猫に襲われ首輪を外して逃げ出した。
◆ハーネスとリードを付けて散歩中、
嫌がってハーネスからすっぽ抜けて駆け出した。
このような例は結構多くあるようですが、
逃げた猫が見つかった例は少なく、
ほとんどが悲しい結果に終わっています。
猫に散歩させたいと思っている飼い主の人には、
猫の習性を理解したうえで
猫にとっての恐怖や危険について
熟考していただきたいと思います。
飼い主の気持ちではなく、猫の気持ちを考えてほしい
上述のとおり
猫と散歩したいというのは、
飼い主の気持ちであって猫の気持ちではありません。
人間は外に出て外の空気を吸うのは
気分転換になって嬉しいかもしれませんが、
猫の方はそうはならないのです。
ストレスや運動不足の解消ならほかの方法があります。
無理して恐い場面に遭遇させることこそ大きなストレス。
猫に必要な運動量と必要なスペースとは、
外の世界ではありません。
猫が安心していられる場所は家の中なのです。
しかしほとんどの猫は上述のような反応を示しますが、
個体差があることも確かです。
とても人なつこくて外でもこわがらず、
好奇心あふれる度胸ある猫もいるかもしれません。
飼い主は普段から見ている愛猫がどのような性格か
わかっていると思います。
その猫の習性や運動神経を見ているはずですので、
見知らぬ外の世界でどう反応するか想像してみてください。
もし散歩させてみようかと思ったときは、
ぜひ愛猫の気持ちを優先に考えてほしいと思います。