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猫に付くダニってどういう虫か見たことがありますか?
ダニを見たことがなく知らない人が多いかもしれません。
発見したもののどう駆除すべきか悩んだ人もいるでしょうか。
見たことがあっても、
じつは何種類かのダニがいることや、
猫を苦しめるだけでなく、
飼い主にまで害を及ぼすことがあることをご存じでしょうか?
猫のダニは人にうつる前に駆除しなければなりませんが、
適切な方法で駆除する必要があります。
では、
ダニはどのような虫なのか、
どのように猫と人に害を及ぼすのか、
どのように駆除すれば良いのか、
ご一緒に調べてみましょう。
猫の顔に付いたマダニを発見!
数年前のある日、
避妊去勢した野良猫家族にエサやりに行くと、
母猫の目の下に小さな虫が付いていました。
よくよく見ると見覚えのある虫、マダニです!
取ってあげたいけど、全然さわれない野良猫なので無理。
ダニを落とす薬をつけることも無理。(-_-;)
ダニは動物の血を吸って満腹になると自分で落ちる
と聞いていたのでしばらく様子を見ることにしました。
ダニはエサやりに行く度に大きくなっていき、
たっぷり血を吸って丸々と重そうになり・・
そろそろかなと思っていると、
ある日猫の顔からダニは消えていました。
マダニを無理に引っ張って取ると猫の皮膚に刺さった
口先の針が残って化膿するそうで、
やはり自然に落ちるのがベスト、
ほっとしました。
しかし
この時手を出さなかったことが最善の策だったと
後日知ることになったのです。
じつはマダニの中には危険なウイルスや細菌を保有していて、
人間に命の危険を及ぼすことがあるのでした。
マダニ感染症は危険!
じつはマダニを媒介する危険な感染症はいくつかありますが、
ここではとくに注意すべき3つの感染症についてお伝えします。
①“SFTS”(「重症熱性血小板減少症候群」)
“SFTS”は、日本国内では2017年までに230件の感染例と、
うち53件の死亡例が報告されています。
一般には野山に生息するマダニに直接かまれて感染する
ことが多いのですが、
2017年夏、野良猫を助けようとした女性が手をかまれ、
SFTSを発症して死亡したというニュースが出ました。
野良猫から女性に感染したということで、
このニュースは多くのボランティアに衝撃を与えました。
マダニをさほど恐れていなかった私も
驚きの事実を初めて知ることになったのです。
この女性の例以外に、
もし人がSFTSウィルス保有のマダニに直接かまれた場合、
どうなるのかというと↓
1、2週間の潜伏期間を経て発症します。
症状は、頭痛、発熱、消化器症状、神経症状、筋肉痛、
リンパ節の腫れ、意識障害、皮下出血などです。
致死率は約7%から30%と言われていますので極めて危険。
②日本紅斑熱
こちらもマダニが媒介する感染症。
リケッチアという細菌が感染源です。
人がこの細菌を保有するマダニにかまれると約1週間前後の
潜伏期間の後↓
頭痛、高熱、全身倦怠感などを伴い発症します。
でも日本紅斑熱は、紅色の発疹が手首や足首から体へ広がる
という特徴があるのでわかりやすい。
そして抗菌薬による治療ができる、ということで
対処が早ければSFTSよりは助かる率高いです。
SFTSは対症療法しかないのですから。
③ライム病
ライム病ボレリアという細菌を保有するマダニに
かまれることで感染します。
ただこちらはマダニが人の皮膚に36時間以上、
つまり1日半以上付着している状態で感染するので、
気付いてすぐに除去すれば感染することはありません。
感染した場合、次の皮膚症状から現れます↓
かまれた場所の赤い斑点がゆっくり拡大して、
中心部の色が薄くなり大きな赤い丸になる。
そして発熱、筋肉痛、関節炎などが見られ、
脳や神経まで異常をきたすことになります。
でもこのライム病も抗菌薬による治療ができます。
このようにマダニは
人間にとってとても危険な感染症を媒介するのですが、
ではマダニにかまれた犬や猫はというと↓
人と同様に発熱・食欲不振・関節炎・神経障害等を起こし、
やはり危険になるのです。
もちろんすべてのマダニが危険なのではなく、
原因となるウィルスや細菌を保有するマダニが危険なのです。
しかしながらマダニは普通どこにでもいますし、
表面上見た目ではウィルスや細菌があるかどうかもわかりません。
どうすれば良いでしょうか?
とにかくマダニが付かないよう注意することです!
第一に注意すべき点は、
犬の散歩や野原を散策する時の服装です。
マダニは直接人間に付くことがあるので、
腕や足元の肌を露出しないことが肝要。
また、草の上に直接座ったり
寝転んだりするのはやめましょう。
野山に行くときは全身に虫よけスプレーを
振りかけて出かけるのが良いかもしれません。
それとともに、
猫は外に出さないようにし、もし出てしまった時には
帰宅したらすぐ全身くまなくチェック、
外猫との接触でうつることもあるので、
ブラッシングやウェットタオルなどで清潔にしましょう。
猫のダニが引き起こす疥癬も侮れない
疥癬は野良猫の間でしばしば見かける皮膚病です。
原因は猫の皮膚に寄生した“ヒゼンダニ”というダニの一種。
皮膚の角質層に穴を掘って住み着くのです。
非常に痒みが強いので、猫はひっきりなしに掻きまくる。
顔や首から始まって全身に広がっていきます。
皮膚に赤い発疹があり、
掻いたところの傷が血を出していたり、
広く脱毛していたり、かさぶたが固まっていたり、
見た目がひどいので大抵わかります。
これまでに見た中で最もひどかったのは、
毛の薄い皮膚が分厚くなって象のようになっていた野良猫。
「エレファントマン」という映画を思い出しました。
この猫は疥癬だけでなくほかにも病気があったようで、
保護する前に亡くなってしまいました。
疥癬は野良猫だけの問題ではありません。
飼い猫にも感染しますし、人にも感染するのです。
もし飼い猫が感染した場合は、
初期症状のうちに動物病院で治療しましょう。
とにかく痒がったり、頭部に発疹が出たりするので
すぐわかると思います。
ヒゼンダニが人に感染した場合は、
やはり痒みを伴う皮膚炎を引き起こすので、
その場合は人間の病院の皮膚科での治療です。
ヒゼンダニには“耳ヒゼンダニ”という種類もいます。
これは“耳ダニ”を引き起こすダニ。
耳ダニがいると、
猫の耳の中は真っ黒になっています。
耳ダニは野良猫に多く見受けられるのですが、
飼い猫でも時々耳の中を確認しておきましょう。
これらはいずれも接触感染なので、
接触を避ければダニを予防できます。
猫は完全室内飼いにし、
人はむやみに外猫に触らないよう注意することです。
猫のダニの安全な駆除の仕方
マダニは目に見えるダニですが、
ヒゼンダニは顕微鏡でなければ見つけられません。
顕微鏡でも発見できない場合もありますが、
表面的な症状で判断できます。
ヒゼンダニによる疥癬であれば、
滴下薬の治療とシャンプー療法がありますが、
獣医師の指導を仰ぎましょう。
耳ダニであれば、
耳の中の黒いねっとりした耳垢をきれいに拭き取り、
病院の点耳薬を付けてよくもみます。
そしてノミダニ駆除薬を滴下しておきます。
万一飼い猫にマダニがついた場合は、
前述のとおり触らないことです。
無理に引っ張って取ると皮膚に刺さった口先の針が残って
化膿し炎症を起こします。
動物病院で安全に治療しましょう。
こうして見てきたようにいくつかの厄介な猫のダニ、
なんといっても予防が一番です!
生活の場をいつも清潔にし、
予防を兼ねて猫の体をこまめにチェックすることも必要です。
また、予防策として定期的に
ノミダニ駆除薬を滴下するのも良いかもしれません。