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野良猫を見つけて、
かわいいので自宅で飼いたいと言う人がいます。
なつかせるにはどうすれば良いでしょうか?
やってみる価値はありますが、
成功させるための方法論など事前の知識があれば有利です。
ボランティアが実際に行なっているやり方をご紹介しますので、
参考にしていただければと思います。
野良猫をなつかせるのが難しいのは当たり前
野良猫をなつかせるのは簡単なことではなく
結構時間がかかり、面倒で地道な努力が必要です。
なぜ野良猫はなつかせるのが難しいのかその理由を知るには、
まずは野良猫を理解することから始めましょう。
猫はそもそも単独で生きる動物でした。
人と暮らすことに慣れた飼い猫でさえ独立心が強く、
社交的ではありません。
野良猫の場合はもっとその傾向が強く、
野良で生きる厳しさから警戒心の塊になっています。
しかも猫をいじめる人に出会っていたりしたら
人には近づかなくなるでしょう。
たまたまエサをくれる人がいても
常に距離を保って、すぐに逃げられる体勢。
エサやりの期間が長くなればだいぶ距離は縮むものの、
いざとなれば一瞬で逃げ出します。
エサやりさんの中には「なつこい猫だ」と言う人もいますが、
ある程度そばに来るのはエサのためで、
人懐こいわけではありません。
猫の瞬発力を知っている人ならわかると思いますが、
猫は決して油断してはいないのです。
とくに成猫の場合、
距離を縮めるには時間と根気強さが必要です。
猫の性格にもよりますが、
すでに人への警戒心敵愾心が固まっていると
相当の時間がかかります。
根気強くあきらめずに対応し続け
信頼関係を築くことができればやがて心を開いてくれますが。
子猫の場合、人への警戒心が強くないので
なつこくなるのは早いです。
2ヶ月以内なら、まめに手をかけて世話すれば
すぐになついてくるでしょう。
でも月齢3、4ヶ月ともなるとなつくかどうかの見込みは半々。
子猫は母猫の性格を受け継いでいることが多く、
母猫が穏やかな性格なら子猫も大抵穏やかで
早くになつかせることができます。
母猫が人間不信でシャーシャー威嚇するなら
子猫はそれを真似てシャーシャー言うものです。
いずれにしろ子猫が5、6ヶ月過ぎたら成猫と同じ扱い。
相当時間をかけて世話しなければなりません。
このように
野良猫を保護してなつかせるのは時間と根気が必要で
必ず成功するとは限らない。
それなりの覚悟をもって臨まなければなりません。
でも難しい分成功した時の喜びはひとしお。
なつこくなった愛猫が愛おしい存在になるでしょう。
では、挑戦する人のために
ボランティアが実際に行なっているやり方をご紹介します。
野良猫をなつかせるボランティアのやり方
◆子猫をなつかせる
野良猫の子猫はなつかせて、ほぼ全頭里親に出そうと
いうのがボランティアの考えです。
ですので生後2ヶ月以内の子猫は素早く保護して
早くに人馴れ訓練を始めたいと思っています。
前述のように2ヶ月以内の子猫は大抵なつかせることができますが
3、4ヶ月となると少し難しくなるので、
とりあえず一旦保護して様子を見ることにします。
子猫には2回のワクチン接種、駆虫、ウィルス検査が必要で、
約1ヶ月の期間、並行して病院にかけながらです。
なつく見込みがあれば譲渡に向けてトイレ訓練なども行ない、
飼い猫として人と暮らせるようにしていきます。
保護したての子猫たちは、
人が恐いので逃げよう逃げようとするものです。
体の小さい子猫が逃げると、
テレビ台の下や家具の後ろなど
手の届かない隙間に潜り込んでしまったりします。
ですので最初はケージ暮らしでスタート。
環境に慣れて保護主を信頼するようになるまで、
給餌やトイレ掃除の際頻繁に声がけをします。
慣れてきてエサを要求するようになったら
警戒心が解けてきた証拠。
そっと人差し指を子猫の顔の前に出してみる。
クンクン匂いを嗅いで、ペロッとなめたらもう大丈夫。
やさしくそっと頬や首まわりにさわり、
静かに撫でてみます。
びっくりして顔を引っ込めたら中止。
何度か繰り返すうちにこわがらなくなります。
撫でられることに慣れたら
次は首根っこを掴んで持ち上げる。
子猫がそうされるとおとなしくなるのは
母猫が子猫を運ぶ時首の後ろをくわえていた名残。
そしてジャンパーや上着の中、懐に子猫を入れて
しばらく赤ちゃんをあやすようにしていると、
子猫は母猫の懐に抱かれているように感じるのか
しばし静かにしており、中には眠ってしまう子も。
やがてケージの外に出しても大丈夫と判断したら
外で猫じゃらしなどで遊ばせます。
子猫は遊ぶのが大好きなのでうれしさいっぱい、
どんなものでもおもちゃになります。
こうして人との生活に慣れた子猫は譲渡会デビューして
かわいがられる飼い猫となるのです。
しかし
保護時点ですでに大きくなった子猫の中には
なつく見込みのないものがいるのも現実で、
その場合は適切な時期に不妊手術を施してリリースし、
地域猫として一代限りの命を全うしてもらうことになります。
でもその判断はボランティア各人の決定。
せっかく子猫で保護したのに野良猫の厳しい生活に
戻すことができないと思う人は
本当に辛抱強く長い期間をかけて世話していくのです。
◆成猫をなつかせる
野良の成猫の場合は子猫のようなわけにはいきません。
生粋の野良猫だったらなつかせるのに相当時間がかかります。
でも中には穏やかな性格で警戒心が弱い猫もいます。
人からエサをもらうことに慣れていると
案外平気で近くまで寄ってくるのです。
それでも成猫にはより慎重な対応が必要です。
野良猫の爪と牙は凶器になりますので。
保護には捕獲器を使用します。
素手で捕まえるのは無理ですから。
エサ場所のそばに捕獲器を設置し、
入ったら運んでケージに移す。
簡単そうですが、意外と難しいのです。
おとなしそうだった猫も恐怖で激しく威嚇したり
暴れたりしますから。
慣れていない人がやると
ここで逃げられてしまう場合もあります。
この時は経験者に手伝ってもらう方が安全です。
ケージに移したらしばらくはそっとしておきます。
猫が落ち着くまであまり構わないことです。
時間が経ったら、逃げられないように注意しつつ、
声をかけながらエサと水を入れてあげます。
トイレは初めからケージに入れておき、
砂は野良猫が使いやすいベントナイト砂。
ここからなつかせるための訓練が始まります。
ケージ内の猫と向き合うのは子猫の場合と同様です。
頻繁な声がけは、少し高音の声で静かに話しかける。
しゃがんで目線を低くする。
ケージ扉の開閉は素早く注意深くしつつも、
動作は落ち着いてゆったり。
そばにいるけど何も悪いことしないと思わせる。
安全だと思えば猫は徐々に警戒心を解き、
やがて心を許してくれるでしょう。
そこまでどれくらいの期間なのかは猫によって異なります。
性格や育った環境、過去の経験によって。
焦らずにじっくり猫のペースで進めていきます。
中には初めから妙に人懐こい猫と出会うこともあります。
人馴れしていて、人に甘えることを知っているのです。
それは元飼い猫で、
飼い主の都合で捨てられたのかもしれません。
その場合はなつかせる努力の必要がなく、
早々に保護した人の飼い猫のようになるでしょう。
以上が野良猫を保護してなつかせるための実践法ですが、
所要期間や成功率は猫によって様々です。
子猫にしろ成猫にしろ生来の性格が大きく影響するのですが、
猫の性格を見極めるのはじつに難しいもので、
保護してみないとわかりません。
でもやってみる価値はありますので、
野良猫をご自分の飼い猫にしたい方には
この記事を参考に実践することをお勧めします。