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野良猫への餌やりは違法なのかどうか、
餌やりさんと周辺住民の間に確執があります。
餌やりさんの心理と近隣の迷惑被害はどんなものでしょうか?
自治体の禁止条例や動物愛護法を正しく解釈すると、
野良猫を適正に管理しマナーを守って餌やりするなら
違法ではないとわかります。
両者の間のトラブル回避のためにもぜひご参照ください。
野良猫に餌やりする人と迷惑を被る人の確執
野良猫に餌やりする人、通称“餌やりさん”は
野良猫がいるところには必ず存在します。
ご近所では「餌やってる人はいない」と思われていても、
じつはひそかに餌やりしている人がいるものです。
すぐ近所ではなくても、少し離れた区域から出かけてきて
日課のように野良猫に餌やりする人もいます。
そのような餌やりさんはなるべく人に見られないように
サッと餌をおいて立ち去るのが常。
また、餌置き場はひとつではなく数か所あって、
急いで回るのでそそくさと隠れてやっているように見えてしまう。
中にはその地区でTNRした人が堂々と餌やりする場合もありますが、
多くの餌やりさんは人目につかないように行動します。
野良猫に餌やりすることが後ろめたいようです。
なぜでしょうか?
「野良猫に餌をやらないでください」と
広報・回覧板・張り紙などで呼びかけられるので、
見つかると非難されると思っているのです。
それでも餌やりさんは野良猫への餌やりをやめることはできません。
見つからないように隠れてでも餌やりします。
餌やりさんを駆り立てるのはどんな心理なのでしょうか?
食べ物のない野良猫はお腹をすかせている。
邪魔者扱いされてかわいそう。
餌をあげるとなついてきてかわいい。
小さな命を助けてあげたい。
恵まれない野良猫に餌やりするのは悪いことではない。
むしろ良いことではないか・・
多くの餌やりさんはそんな気持ちを抑えられないので
いくら「餌をやらないで」と言われてもやめることができません。
ご近所で迷惑を被っていると苦情を述べる人は猫嫌いで、
小さな命へのやさしい気持ちのない人、と思ってしまうのです。
実際のところご近所ではどんな迷惑を被っているかというと↓
置き餌には大抵発泡スチロール製のトレーなどが使われますが、
時間がたつと野良猫たちだけでなくカラスも食べに来るので
餌が周りに散乱し、汚れたトレーが風で飛んだりします。
生の魚肉を置き餌されるとひどい汚れ方になり夏場はハエが発生。
ゴミ置き場も荒らされて周囲は極めて不衛生な状態。
不特定の野良猫たちが集まり、その数は増えていく。
出産の時期は子猫たちも出没、時折死骸を見かけることもある。
さらに迷惑なのは糞尿被害。
庭に入り込んで糞尿するのでうっかり踏んでしまうことも。
発情期の猫の鳴き声は耳障りで騒音のよう。
タイヤにされたマーキングの臭いが鼻につく。
鉢植えの草花が枯れてしまったり、
駐車場の車に足跡や小さなキズが付いていたり。
こんな状態が続くと
我慢していたご近所の人も耐えきれなくなり
役所に苦情申し立てすることになりますね。
そして「無責任な」餌やりさんは行政指導を受けることになります。
野良猫への餌やりは違法なのか?
野良猫被害を受けている人と餌やりさんの確執は
なかなか解決の難しい問題です。
実のところ野良猫への餌やりは違法なのでしょうか?
自治体によっては「野良猫への餌やり禁止」条例を
打ち出しているところもありますが、
それは主に保護すべき希少動物が生息している地域で、
自然保護の観点から野良猫被害を防ぐための条例。
また、猫の殺処分数を減らすための対策として
餌やり禁止条例を作った自治体もありますが、
これは飼い猫やTNRの猫以外の猫に対しての禁止であって、
適正な管理のもとで餌やりすべきという点が見落とされて
誤解を生んでしまったようです。
じつは、
野良猫に餌やりすること自体を禁止する法律はありません。
でも動物愛護法にはこんな条文があります。
「不適正な飼養や無責任な餌やりによって
周辺の生活環境が損なわれた場合、
都道府県が原因者に対して、指導、勧告、命令を行うことが
できる」とされていて、
「命令に従わなかった場合には、原因者に対して50万円以下の
罰金が科されることがある」ということです。
それらを総括すると
周辺の環境を損なう“無責任な餌やり”はダメだけれど
適正に管理されている野良猫には餌やりしても良い、
ということがわかります。
では餌やりさんと近隣住民の方はどのように折り合いを
つければ良いでしょうか?
野良猫の餌やりトラブルを回避するマナー
めったにないことですが、
迷惑を被った周辺住民が裁判に訴えた事例もあったそうです。
住民への被害を防止する対策を取らなかったという点で違法性がある、
として住民側の損害賠償請求が認められたとか。
そこまでこじれる前に対策していればと思います。
そもそも餌やりさんに悪意はありません。
猫を助けたいというやさしい気持ちから始めたことです。
ただ住民の方々への配慮が足りなかったのです。
餌やりさんと近隣住民の方がトラブルにならないためには
野良猫による迷惑行為をなくせば良いわけです。
どんなふうに?というのは
自治体のホームページなどにも説明されていますが、
大抵次のようなマナーが勧められています。
↓
・餌やりの場所と時間を一定にする。
・食べ終わるまで見守り、終わったら器を片付ける。
・トイレの場所を決めて設置し、そこでするよう仕向ける。
餌場から少し離れた場所で、広めのトイレ。
ベントナイト砂が猫は使いやすい。
・毎日トイレの糞尿を取り、時々砂を交換する。
・餌場とトイレまわりを掃除する。
・成猫は避妊去勢する。
餌やりさんはこれらのことをしっかりと行なって
野良猫を適正に管理していくこと、
そして周辺住民の方々に理解を求めて話し合うことが重要です。
ひとりで対処することが不安で気後れするのであれば、
近隣でTNR活動をしている猫ボランティアに相談して、
共に活動していくことをお勧めしたいと思います。