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猫とは猫舌であると昔から言われてきました。
なぜ猫の舌だけが取り上げられるのか、
“猫舌”の由来と実態を調べてみましょう。
そして猫の舌の驚きの機能を調べると共に
猫の飲食の適温とはどれくらいなのか、
実際の猫たちの経験を交えてご紹介します。
なぜ猫だけが猫舌と言われるのか
“猫舌”とは熱いものを食べられないことの比喩。
人にも使う言葉で、
猫舌の人は熱いものが食べられませんね。
中には、ラーメンやうどんだけでなく、
牛丼にさえも冷ますために氷を入れる人もいます。
ところで
なぜ猫だけが取り上げられるのでしょうか?
熱いものを飲んだり食べたりするのは人間だけで、
ほかの動物たちも熱いものは苦手なはずです。
そもそも動物が熱いものを食べることはありません。
調理して食べるのは人間だけですから。
野生の肉食動物は捕らえた獲物を食べるので、
その体温以上の温かいものは食べていないはずです。
それ以上に温かいものを食べる機会があるのは
人間と一緒に暮らす犬や猫。
犬は昔戸外で飼われることが多かったですが、
猫は室内外自由で人のそばで飼われていました。
飼い主からのおこぼれにあずかる機会の多い猫は、
たまに熱いものが与えられたかもしれません。
あまり熱いと食べられないので冷めるまで待ちます。
そんな状況から猫は熱いものが食べられない→
熱いものが食べられない人は猫と同じ→“猫舌”
という認識になったようです。
最も人の生活近くに入り込んだ猫が
動物の代表となったわけですが、
猫の舌はほかの動物たちとは異なり、
極めて有用な機能を持っています。
猫の舌の驚くべき役割を見てみましょう。
猫の舌はどうなってる?生きるための有用機能
猫になめられたことがありますか?
痛いと感じるくらい猫の舌はザラザラしていますね。
見てみるとトゲトゲの突起が密集していて
のどの奥の方へ向いています。
そのおかげで水をうまくすくい上げて飲めるわけです。
この突起は糸状乳頭(しじょうにゅうとう)、
人間の爪のような硬さで、
いろんな役割を果たしてくれるすばらしい器官です。
詳しく見ていくと↓
●トゲトゲの突起で獲物の肉をそぎ落とす。
突起はのどの奥へ向かっているので、
うまく肉と骨を分離させることができます。
魚も上手に骨から身をはがせるのです。
我が家での出来事ですが、
ある時、焼きカレイを盗まれたことがあります。
猫は見事に骨だけを残していました。
さすがに硬い骨は食べたくなかったようです。
●食べて大丈夫かどうか確認する。
猫の味覚は、酸味・苦味・塩味の3種類程度だそうです。
酸味や苦味は人間よりも敏感と言われています。
酸味や苦味でその食べ物が傷んでいるかどうかわかります。
こうして猫は食べてはいけないものを確認できるのです。
でも
お腹が空きすぎた野良猫は多少傷んだものでも
食べてしまいますが・・・
●体温調節をする。
猫は汗腺が少なく、汗をかいて体温を下げることができません。
そこで唾液で毛をぬらし、それが蒸発する時に体温を下げる
という仕組みです。
舌の突起は中が空洞になっています。
猫が舌を口に引っ込める時唾液がこの空洞を通って吸い上げられ、
毛をなめることで毛の奥深くの皮膚に唾液を届けます。
そして蒸発熱(気化熱)を利用して体温調節をするのです。
またこの唾液には汚れを分解する酵素が含まれているそうで、
きれいにすることと体温調節の一石二鳥です。
●大事な被毛を整える。
猫は起きている時間の約4分の1は毛づくろいしています。
クシのように細かな舌の突起で、ブラッシングするように
毛をとかして毛並みを整えます。
毛がもつれていると、突起がしなって毛の深くに入り、
元に戻ろうとする力に引っ張られてほどけるのです。
また毛づくろいはこの突起のおかげで
肌への良い刺激にもなっています。
●猫同士のコミュニケーション。
仲の良い猫同士が、自分だけでなく
相手をグルーミングするのもよく見る光景。
自分ではなめられない首周りやあごの下などを
飼い主になでてもらうと猫は喜びますね。
仲間の猫になめてもらうのも最高のくつろぎタイム。
どちらも目を細めてうっとりしてます。
“猫舌”という言葉にはマイナスイメージが漂いますが、
以上のように猫の舌はすばらしい機能を備えた器官なのです。
では猫にとっての適温はどれくらいなのでしょうか?
猫は猫舌だけど冷たいのも苦手、エサと水の適温は?
猫舌の猫は大抵熱いものが食べられないのですが、
中には意外と熱いものを食べる猫もいるのは事実。
生存競争の激しい野良猫たちは
熱いものを冷めるまで待っていられません。
湯気の立っているアツアツのミルクを、
猫舌とは思えない勢いでペロペロ飲む猫もいるそうです。
人からゆで立ての鶏肉や魚をもらうことに慣れている猫たちは
熱さに対する耐性ができるらしく、
冷めるまで待たずに食べ始めるのを見たことがあります。
熱そうに何度か口から離してましたけど・・
では
猫が安心して食べられる適温って何度なのでしょうか?
自然界においては、肉食動物が食べるエサの温度は
その動物の体温ですね。
ウサギやネズミの体温はおよそ38度、鳥類は少し高い40度。
であれば元野生だった猫が食べるのに適した温度は
38度~40度と考えられます。
野生の小動物を食べることはもうないとしても、
缶詰などのウェットフードはその温度に近い方が
猫は食べやすいということになるでしょう。
我が家では病気で食欲が落ちた猫に、
鶏のささ身をレンチンして与えることがあります。
(鶏肉が好きな猫は多いのです)
熱いうちに細かくさいて、冷ましてから与えますが、
時にはまだ熱かったらしく、くわえた瞬間アチッと放し、
でもすぐ気を取り直して温かいうちに食べてました。
残った分を冷蔵庫保存して次回あげるときにも
少しレンチンして温めた方が好みのようです。
冷えた状態のままであげるとあまり食が進みません。
実は猫は、熱いものはもちろん苦手ですが、
冷たすぎるものも苦手なのです。
熱すぎず冷たすぎず、
猫は適度に温かいものが好きなようです。
では、飲み水の温度はどうでしょうか?
通常は水道から汲み立てのままで大丈夫ですが、
冬は水が冷たすぎると飲水量が減ります。
冬はやはり水の温度も考えて、
ぬるま湯にしてあげると喜んで飲むようです。
常にその温度を保つことはできませんが、
大抵食後には水を飲むので、
我が家では食事時にぬるま湯をあげています。
今回は熱いものが苦手な“猫舌”についてでしたが、
猫の舌のすばらしい機能については驚きだったかもしれません。
お宅の愛猫の舌を確認してみてください。
そしてその敏感な舌を守ってあげてくださいね。