この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。
障害のある猫に出会ったことはありますか?
あまり見かけないかもしれませんが障害のある猫は存在します。
人間のような介護制度はないので短命かもしれませんが、
障害ある猫も懸命に生きているのです。
そのひたむきな姿には感動を覚えます。
ここでは障害ある猫の際立った事例を3つご紹介します。
ひどい状態で保護された彼らの生きる姿勢をご覧ください。
虐待で後ろ両脚を失った猫
シロには後ろ両脚がありません。
子猫の時に失ったのです。
保護主が発見した時、両脚が紐でぐるぐる巻きにされており、
体を引きずって動く状態だったそうです。
虐待なのかいたずらなのか、苦しんでいる子猫1匹。
すぐ動物病院へ運びましたが、すでに両脚とも壊死しているとの診断。
獣医師は安楽死を勧めたそうですが、
すぐには返事できず自宅に連れ帰りました。
手術で両脚を切断すれば生きられるかもしれないと言われ、
家族で相談、
娘さんの切なるお願いに負けて、
ご主人は手術費用を出してくれることに・・
幸い手術は成功し、子猫の命は助かりました。
保護主の熱意に動かされた獣医師は病院代を
半額にしてくれたそうです。
子猫には強い生命力があり、手術後は順調に回復、
保護主宅に引き取られました。
当初は動きが不自由で、本人困った様子だったそうです。
飼い主の方も介助してあげないといけないので何かと面倒。
とくにトイレの世話が大変だったとか。
ペットシーツを敷き詰めていても、
留守の間に排泄されると体中ウンチまみれになってます。
それでもやはり子猫。
遊びたくて動き回り、目が離せません。
子猫は体の不自由さを嘆くことなく、一生懸命動きます。
元気に遊んで、たくさん食べて、
まっすぐに飼い主を見つめてゴロゴロ、ゴロゴロ喉を鳴らす。
そんなひたむきな子猫の姿に感動した飼い主。
たまらなくいとおしくなったそうです。
6ケ月過ぎた頃、突然大声で変な鳴き方をしたシロ、
発情期と知った飼い主はすぐに去勢手術へ連れて行きました。
その後は大きな病気もせずに成長し、
生活リズムが安定すると飼い主もお世話が楽になったそうです。
少し高い場所への上り下りはできないので、
そこは飼い主が介助。
抱きかかえて庭へ出してあげると、前足だけで上手に散歩して、
草花の匂いをかいだり、砂利のところでおしっこしたり、
お気に入りの場所で日向ぼっこしたり、
自分に障害があるとは思っていない様子。
猫は人間と違って自分を他者と比較して
身の不運を嘆いたり絶望したりはしません。
目の前の状況にどう対応するか、今をどう生きるか、
それしか思っていないというか、むしろ考えないのです。
ひたむきに今を生きるだけです。
それを見ていると生きる姿勢を教えられると飼い主は言います。
決してあきらめたり自堕落になったりせず、
精一杯自分にできることを行なって生きる。
そんなシロの姿に励まされることが何度もあったそうです。
私たちも考えさせられる経験でした。
病気で両目を失った猫
クロには両目がありません。
エサを求めてさまよっている時保護主と出会いました。
置いたエサの匂いを嗅いで食べる様子が変なので、
保護主はまじまじと顔を見て確かめたと言います。
一見すると両目を閉じているかのようですが、
食べ終えた後の行動から目が見えていないとわかりました。
周囲に何があるのか耳と鼻で様子を窺いながら
慎重に動きます。
人懐こそうなので声をかけると返事して近寄って来る。
思いきって触ってみると体をすり寄せてくる。
なつこい猫とわかりひと安心、
背中をなでると、猫もうれしそうにゴロゴロ。
近所の飼い猫なのかと思ったそうです。
でも体全体の汚れ具合、とくに爪先の泥汚れが
長期間の野良生活を物語っていました。
一応近所に聞いて回ると野良猫だという返事ばかり。
妙に人懐こいので、飼い猫が捨てられたのかもしれません。
そのままにしておいたら車にひかれる可能性もあると思い、
保護主は自宅に連れて帰りました。
猫は人の家で暮らすことに慣れているのかすぐに溶け込み、
よく食べてぐっすり眠ったそうです。
やっぱり元飼い猫だったのかも・・
ともあれまずは動物病院へ行く必要があります。
ウィルス検査・ワクチン・駆虫、去勢手術もしなければなりません。
病院で診察を受けるとおよそ2,3才くらい、
子どもを産んだことがあるらしいとのこと。
目はおそらく子猫時代に鼻気管炎が重症化したことにより
眼球が落ちたのではないかと推測されました。
失明してるのに子どもを産んだのなら、
十分な世話ができずに死なせてしまったのではないかとも思われ、
いっそう哀れさを感じ切なくなりました。
クロと名付けられたその猫は人が好きみたいで、
保護主家族にまとわりついて甘えるようになり、
見えない目で一生懸命おもちゃにじゃれると言います。
つらかった過去の生活はもう忘れてしまったでしょう。
ずっと前からここの家族の一員という顔になってるとか。
やはり保護主はひたむきに今を生きるクロに励まされて、
些細なことに負けてはいられないと思うそうです。
事故で身体障害となった猫
その猫は右後ろ脚が、関節がないかのように硬直しており、
付け根から鋭角にまっすぐ体の左前方に飛び出ていました。
見たことのない体勢なので説明が難しく、
想像もしにくいかと思います。
とても普通に歩けないと思う状態なのですが、
その猫は3本脚で器用に跳ねるように歩くのです。
複数の猫を飼っている家の庭に姿を見せた時、
驚いた保護主はエサを与えることにしました。
それから毎日朝晩その猫はエサをもらいに来るようになり、
保護主は“骨折のコッちゃん”と名付けました。
数か月後、
コッちゃんは懐いてなでられるまでになったので、
保護主は家に入れることを考え、
避妊手術やワクチンのため病院受診することに。
しかし驚いたことに避妊手術は済んでいました。
かつて飼い猫だったということです!
そして
レントゲンを見ると大腿骨部分がボルトで固定してあり、
さらに腕の付け根部分で皮膚移植していることもわかりました。
過去に大きな交通事故にあって大手術を受けたのでしょう。
この結果には保護主も私たちもビックリ。(;゚Д゚)
ニョキッとまっすぐ固まってしまった脚は
治療中断だったのかどうかわかりませんが、
いずれにしろこの猫は以前の飼い主に大事にされて、
相当の費用をかけてもらっていたことがわかりました。
保護主の住んでいる地域は高齢の方が多く、
独り暮らしのおばあさんが亡くなったり施設に入ったり
というニュースが時折あったそうです。
もはや確認のしようがないのですが、
飼い主がいなくなって猫は放り出されたのかもしれません。
田舎の方では時々聞く話です。
それほど大事にされていたのに野良となって
食べることができずさまよっていた時期を思うと
猫もおばあさんも哀れで涙が出てきたと保護主は言います。
そして、
おばあさんに代わって自分が最後まで面倒をみようと
決めたそうです。
今やコッちゃんは保護主にすっかりなついて、
膝の上でゴロゴロ言いながら甘え顔で見上げるとか。
以前よりも元気に器用に3本脚で室内を走る姿を見て
生きる意欲にあふれていると感じるそうです。
ここまで
ボランティアが保護した障害ある猫をご紹介しました。
それぞれの理由で後天的に障害を負うことになった猫たちですが、
いずれも障害がありながら野良生活を必死に生きていました。
中には先天的な障害を持つ猫もいるでしょう。
どんな障害があっても彼らはひたすら生きようとします。
動物は食べることしか知らないのだと言う人もいますが、
食べることは生きることなのです。
理屈の多い人間と違ってひたむきに生きようとする彼らの姿は
見倣うに値するのではないでしょうか。