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すでに猫を飼っている人の中には、
猫との生活が癒やしと慰めを与えてくれるので、
多頭飼いすればもっと楽しいのでは?と思う人がいます。
たしかに毎日賑やかで楽しいかもしれませんが、
事前にいくつかの点を慎重に考えなければなりません。
参考までに、考えるべき大切な点と、
ボランティアが行っている手順を具体的にご紹介します。
猫を多頭飼いしたいならまず考えるべきこと
猫を多頭飼いするということは、万が一の場合
多頭飼育崩壊の危機をはらんでいるということです。
そんなことにならないよう事前に十分考えて、
多頭飼いしても大丈夫という確信が必要です。
考えるべき点とはどんなことでしょうか?
●第一に費用がかさむことを考えなければなりません。
猫の数が増えれば餌やトイレ砂の消費量が増えます。
キャリーバッグや爪とぎ、おもちゃも今までより多く購入。
もしかするとケージやキャットタワーも
さらに必要になるかもしれません。
何より大きいのは医療費。
不妊手術と毎年のワクチン以外にも、
下痢や便秘、鼻風邪などはいつでも起こりえますし、
皮膚病や口内炎も起きやすい病気。
猫が増えれば医療費がかさむのは当然ですので、
それを十分賄えるという予算の組み立てが必要です。
昨今は動物の保険も多くなって、
医療費に備えることができるようになりましたが、
多頭飼いになればそれだけ保険料もかかります。
●猫の数に見合う十分なスペースを確保しなければなりません
猫の数が増え、トイレが増えただけでも部屋は狭くなります。
食器・おもちゃ・爪とぎ・猫ベッドも場所を取るのでなおさらです。
若い猫なら思いっきり走り回って遊ぶスペースが必要、
また万一の感染症などに備えて隔離部屋もあった方が良い。
そう考えると十分な広さのある家でなければ多頭飼いは
難しいということになります。
猫の数にもよりますが、狭い家の中で無理に多頭飼いしたら
人も猫もストレスを抱えるようになるでしょう。
部屋数が少ないのであれば最低限の数に抑えておくのが
無難かもしれません。
●多頭の猫の世話に要する時間も考える必要があります。
餌をあげて水を交換し、トイレ掃除、
日々のお世話にかかる時間も多頭になれば倍増です。
爪切りやブラッシング、遊びの相手もするとなると
手間がかかりすぎて時間が足りないという事態になるかも。
癒やされるはずが精神的負担になってしまっては残念すぎます。
●多頭飼いは猫同士の相性が重要です。
猫は一般的に繊細で神経質、それを念頭に置いて、
先住猫と新入り猫の相性を優先して考えなければなりません。
飼い主が気に入った猫ではなく、
先住猫が受け入れてくれる猫を迎えましょう。
猫同士の相性が合えば、仲良く団子寝したり、
グルーミングしあったり、
微笑ましい姿に癒やされること間違いないのですが、
相性が悪いと険悪な雰囲気が漂い、ケンカが勃発することもあり、
飼い主の心休まる余地がなくなります。
猫の多頭飼い、ボランティアが実際に行っている手順
実際に猫を多頭飼いしている最たる例は猫ボランティア。
大きなボランティア団体ではなく、
小規模のボランティアグループや個人ボランティアの方が
一般家庭が参考にしやすいと思います。
彼らは個人の家で限界まで多頭飼いしています。
好んでそうしているわけではなく、
見かねて保護した結果多頭飼いになってしまったのですが。
飼育数10匹以上は当たり前で、
20以上、30以上という個人ボランティアもいます。
では実際に新たな猫を迎え入れる際は
どのような手順で行っているのでしょうか?
↓
まず先住猫たちは不妊手術・ワクチン・駆虫・ウィルス検査
という必要な医療を終えているので、
新入り猫もそれらを終えていることが大前提。
感染症や寄生虫などは同居する猫にうつってしまいますし、
慣れないうちは万一のケンカによってエイズ白血病が
うつる可能性もあるからです。
何より不妊手術していないと、
未手術の成猫には特有の匂いがあります。
とくにオスはマーキング臭が染み付いている場合があり、
これが先住猫の縄張り意識を誘発してケンカ勃発という
事態もあるのです。
ほとんど臭わないとしても
不妊手術済みかどうか猫同士にはわかります。
前提条件をクリアした新入り猫を同居させる際は、
先住猫を刺激しないように徐々になじませていくことが肝要。
(ここからは先住猫のいるご家庭に猫を譲渡し
トライアルを始めるときと同様になります。)
初めての対面は慎重を期して、まずは新入り猫用のケージを設置。
その時点で先住猫は何か起きると察して警戒モードに。
ケージに新入り猫を入れたら、先住猫に声をかける。
先住猫はゆっくり警戒しながらケージに近づく。
初めのうちは遠くから見ているだけ。
時間をかけて徐々に距離を縮めてきます。
先住猫の性格によってこの時間は異なり、
なつこくて大らかな猫ならすぐに寄ってくるのですが、
神経質な猫だと近寄らないどころか、
別な部屋に隠れて出てこなくなったりすることもあります。
そんな場合は先住猫と別の部屋でケージスタートが安心。
お互いに別の部屋にいることを意識し、
気配・匂い・声などで徐々に相手の存在を受け入れてもらうわけです。
さて、先住猫と新入り猫がケージ越しに対面すると、
どちらかが、または両方ともが「シャーッ!」
これは初対面の挨拶と考えておきます。
猫は急に見知らぬ猫と出くわして驚いたのです。
猫の「シャーッ!」は威嚇だけではなく
驚いたときに反射的に出るものです。
初日は両者のそんな反応を見る程度にしておきます。
無理に近付けようとはしません。
2日目、3日目とお互いが見慣れてくると「シャーッ!」も出なくなり
ケージ越しに鼻を近付けるようになります。
もっとそばに行きたい雰囲気が見えたら
ケージの扉を開けて自由にします。
数日間は飼い主が見ているときだけ自由に遊ばせ、
仲良くやっていけるかどうか見極めることが必要です。
構ってあげる際、
飼い主は先住猫第一の行動を取ることが大事。
エサやおやつをあげるとき、おもちゃで遊んであげるとき、
何事も先住猫を優先します。
恐らくは先住猫のほうが年長で新入りは年下でしょう。
(年齢差は小さい方がうまくいきますね。)
猫は元々社会性があるので序列は認識していますが、
飼い主の言葉と態度でもはっきり教えてあげましょう。
先住猫が飼い主の愛情を奪われたと思ってしまうと、
ストレスで体調を崩すことがよくありますし、
新入りを攻撃するようになる場合もあるからです。
先住猫優先ではあっても、どちらも可愛くて大切な存在
だということを飼い主が接し方によって示すことで
猫同士もその認識を持つようになっていきます。
やがて猫たちはお互いの存在を認めるようになり、
仲良くなるか、邪魔しない同居猫になるかです。
一定の距離を保って近付かないとなると、
相性はいまひとつかもしれません。
それでも時の経過とともに仲良くなっていく見込みはあります。
顔を合わせるたびに唸ったり威嚇したりするのであれば、
相性が悪いと判断することになるでしょう。
トライアルでその結論なら譲渡は中止です。
ボランティアであれば部屋を別にするしかありません。
仲の良い猫同士をグループにして部屋分けすれば
平和を保つことができます。
多頭飼いのボランティアはこんな風にしているのですが、
結構めんどくさそうに感じるかもしれません。
でも猫にも感情がありますから、仲良く暮らしていくために
家族として気を使うのは当然ですよね。