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動物愛護法違反と言えば動物虐待を思い浮かべますが、
虐待には積極的虐待と消極的虐待の2つの面があります。
猫を多頭飼育している人は、もしかするとそれと知らずに
愛護法違反に陥っている場合があるかもしれません。
どんな状況がそれに当たるのか、どうすればそれを避けられるか、
詳細に調べてみましょう。
動物愛護法違反となる動物虐待には2つの面がある
動物虐待は動物愛護法違反の犯罪。
そのことは多くの人に知られるようになりました。
野良猫といえど猫を虐待して殺傷することは犯罪になる
と認識されてきたので、
通報による事件の発見がしやすくなって、
ある意味虐待の抑制力になっている面もあるかもしれません。
ところで
殺傷することだけが動物虐待なのではありません。
動物愛護法をしっかり確認すると
それと知らずに虐待していることがあるかもしれないのです。
動物虐待の定義については以前に
「猫は動物愛護法で守られるようになったのか」で述べました。
念の為、
動物愛護法違反となる動物虐待について確認すると、
具体的には、
愛護動物を殴る、蹴る、熱湯をかける、火を付ける等、
愛護動物の身体に外傷を生じさせる行為はもちろんですが、
心理的抑圧や恐怖を与える等の行為も虐待であり、
それらは積極的虐待として動物愛護法違反となります。
また、積極的虐待ではなくても、
エサを与えずに放置したり、病気や怪我の治療を行わない等の
“ネグレクト”は消極的虐待として愛護法違反とされます。
積極的虐待はわかりやすいと思いますが、
消極的虐待のネグレクトというものは
エサを与えないことや治療しないことだけではないのです。
猫ボランティア目線で見ると、ネグレクトでは?
と思える状況が少なからず見受けられます。
飼い主当人は全く意図せずにネグレクトに陥っている、
つまり猫を虐待して愛護法違反に陥っているわけです。
猫を飼っている人は消極的虐待の“ネグレクト”について
理解しておく必要がありそうです。
具体的にどんな状況なのか見てみましょう。
↓
動物愛護法違反となるネグレクトの詳細な事例
動物愛護法違反となるネグレクトについて
環境省から各自治体へ「飼育改善指導が必要な例」という
詳細な事例の通達がありました。
それによるとネグレクトとは、
「やらなければならない行為をやらないこと」とあります。
より具体的に見ていくと
一般家庭とペットショップそれぞれの環境における事例は
次のように述べられています。
↓
一般家庭であれば、
・エサがない、あるいは腐っている
・水がない、器が汚い
・毛玉がひどい、爪が異常に伸びている
・繋ぎっぱなしで糞がたまっている
・不衛生で悪臭がする
・病気や怪我があるのに治療を受けさせていない
ブリーダーやペットショップであれば、
・ケージが狭く、排泄物が放置されている
・水がない、あるいは不潔である
・建物内、ケージから悪臭がする
・動物の体が著しく汚れている
・病気や怪我をしているにもかかわらず、治療を受けさせていない
・飼育環境が飼育している動物に適していない
(温度・湿度の調整も含む、暑さ寒さに対応できない状態)
・多頭飼育で、飼育環境が不衛生
・ケージ内で動物を過密に飼育している
上記はどれも特別厳しい基準ではなく、
器が汚い、爪が伸びている、悪臭がする、
などはごく普通に見受けられるような気がします。
とくに多頭飼育している家庭だと、忙しさのあまりついつい
お世話が行き届かなくなる可能性があり、
いつの間にか上記のどれかが当てはまる状態になっているかも・・
多頭飼育の家では猫たちの様子を注意して見ていなければ
虐待とみなされる状況に容易に陥るのではと思います。
そして時折見かける多頭飼育崩壊のニュース。
初めは猫を可愛がりたいという思いで飼い始めたのでしょうが、
飼い方が適切でなかったために多頭になり、
やがて管理能力を超えネグレクトに陥ってしまう、
そして崩壊へ、という成り行きでしょう。
多頭飼育崩壊は究極のネグレクト、
つまり動物愛護法違反の罪なのです。
多頭飼育でも愛護法違反とならないために
動物愛護法を詳しく調べると、
多頭飼育の家ではネグレクトに陥る可能性が潜んでいる、
つまり、それと知らずに愛護法違反となってしまうかも
しれないことに気づきます。
かく言う猫ボランティアの私も多頭飼育。
猫の数が多いので、エサ・水・トイレ掃除といった
基本的な世話だけでも結構な時間がかかります。
病院通いや投薬必要の猫が出たりするとそちらに気を取られ、
水がなくなっていたり、爪が伸びていたりすることに
気づくのが遅くなる場合がたまに起きる。
そんな時はネグレクトに陥らないよう自分に言い聞かせます。
ボランティアのネグレクトや多頭崩壊なんて
とんでもないことですが、
決して他人事ではなく、
私たちもその危険性と背中合わせでやっているのです。
でも私たちは目的意識を忘れずに仲間と協働しているので
そのような愛護法違反に陥ることはないと思っています。
「猫の多頭飼育、誰もが崩壊するとは限らない」
のページで見た通り
多頭崩壊の大きな要因は孤立すること。
孤立すると独善的になり、様々なことを判断するのに
猫よりも自分優先になるかもしれません。
排他的になるので自分だけの世界で考え行動、
ますます負の連鎖に陥ります。
ですので
多頭飼育している人は決して孤立しないことが重要です。
家族や仲間と協力し合うこと。
猫を助けて可愛がるという当初の目的を忘れないこと。
孤立することなく常に目的意識を持っているなら
愛護法違反という失敗は避けられると思います。